記事評価:記述の確実性

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基本

説明

  • 報道記事の理想状態の具体的定義 = 正確で正しい情報を伝えるということは、報道記事の基本的な要件です。それを情報として解釈した場合、ある事実に対して、いかに間違うことのない確定的な記述を生成するかということと解釈できます。
  • 不確定記述の確定記述化 = たとえば不確実なことを報道したい時、誰かの発言を引用することによって、発言内容ではなく発言したという事実を報道することがあります。
    これは不確実な内容ではなく発言したという事実という記述に変換する確定記述化の方法です。
    このプロジェクトは、このような「いかに確定記述化するか」という方法論に関するものです。
  • 確実性という観点からの記事評価 = 記事の具体的な記述を、確実性という観点から評価します。また記事の記述法と評価を前もって対応付けて、記事作成の規範と評価のためのアルゴリズムを作ります。

用語

  • 「確実」と「確定」 = ここでは同じ意味で使います。「確実性」は記述したことが将来に実際に起こること、「確定性」は記述と事実の対応が確認されること、というニュアンスがあります。
    しかし記述の不変性を目指すという意味では同じなので、同じものとして扱います。

 

不確定記述

分類と事例

  • 推定挿入 = 「〜とみられる」など。誰が推定しているのか、また推定の根拠が不明なので、記述が示す状態にあいまいさがあります。さらに「〜とみられる」という事実そのものがあるかどうか確実ではありません。
  • 予測挿入 = 「〜が問題になりそうだ」「実用化に向けた動きが加速しそうだ」など。記者の予測が根拠なく入り込んでいます。
    また、「そうだ」という記述は「予測」なのか「思い」なのか、それ以外なのか、意味的に不確定です。
  • コンテキスト挿入 = 「〜問題に関係する」など。関連性の指摘は、記事のコンテキストを読者に提示するのに有用ですが、確実性の観点からすると実際に関連があるかは十分な根拠を示す必要があります。
  • 予定 = 「福岡県警は〜したとみて今後さらに詳しく調べる」など。調べるという予定は実行されるかは不確実です。
  • 特定不可能な属性名 = 「ある記者は」「男は」など。情報源の匿名性保護以外で、特定不可能な記述は、指示対象が不確定です。
  • 状態定義の不確実性 = 「〜を拒否した」「〜を示唆した」など。「拒否した」や「示唆した」と言える状態の定義のあいまいさがあります。

 

確定記述化

情報の次数変換

  • 情報の次数 = 一次情報は、情報発信者自身が検証した情報です。二次情報は、一次情報を持っているとされる情報源からの情報です。n次情報は、一次情報からn次離れた、いわゆる又聞き情報です。
  • 引用化により記述を変える = 不確実な情報を、「〜によると」「捜査関係者への取材で分かった」のように情報源からの引用という記述に変換する手法がよく取られます。引用内容は事実ではなくとも、引用発言があったこと自体は事実といえます。
    このように記述の確実性範囲を変える方法です。
  • 二次情報の引用トリック = 「〜新聞の報道によると」のように、他の新聞の報道を、引用という形で又聞きのように報道する方法です。引用元以外は、「引用元が〜と報道した」という確定的な報道を作ることができます。
    これにより、実際には確実ではない情報を、報道によって広めることができます。もし引用元が間違っていても、訂正情報が元の報道よりも小さい場合には、間違った情報を人々の記憶に残すことになります。

条件文化

  • 条件文による条件付き真理化 = 引用記事と構造的に類似していますが「もしAならばB」という記述は、たとえAが不確実でも「Aのときは必ずB」という推論さえ正しければ成立します。つまりAについての確実性を示さずとも、条件付き真理として確実な記述を作ることができます。
  • ・記事の暗黙の前提の明示化 = ある事件の記事化する際には、どこにその事件を取り上げる特筆性があるかという暗黙の前提が、記者の中にあるはずです。例えば高齢化社会の進行という観点のもとでは、高齢者による自動車事故は特筆性を持つなど。こういった暗黙の前提を、条件文の形式で明示することで、事件の報道理由を確定記述化することができます。
    例えば、「過去と未来を〜と推定ならば、この事件は特筆的である」という条件文による確定記述化ができます。

 

不確実記述の正当化

リスク担保

  • 警察の報告 = 「捜査当局は犯人を拘束した」は、拘束した事実を記者が確認していないならば、本来は不確実です。しかしもし捜査当局が間違っていた場合には、後で捜査当局に事実を確認したり責任を追求できるので、後でトラッキングできる状態にあります。
    このように、一次情報の報告者をトラッキングができ、間違った情報を流すリスクを担保している場合は、確定化をしなくても事実として報道することが正当化できます。

常識的な省略

  • 常識的に確実な予定 = 「福岡県警は〜したとみて調べる」は、調べるかどうかは本来は確実ではなく、「福岡県警は〜したとみて調べるという発表を行った」という引用化した方が確実性は高まります。
    しかし紙面などの都合で、省略することがありえます。この場合は暗黙の了解、あるいは省略として、警察の情報が確実とは言えないという前提を共有している必要があります。

他の記述との比較

  • 「思う」の擁護 = 「思う」という記述は主観的だという理由で、一般的に記事では使うことが避けられています。
    しかし「思う」と「みられる」を比較すると、「思う」のほうが動作主体が明示されていて、「思った」という事実が明示されている分だけ確定度が高いといえます。対して「みられる」は動作主体が誰かも分からず、「みられた」という状態はどのような定義によるのかがあいまいです。
    したがって、「みられる」のようなあいまいな推定を使うよりは「思う」を使うほうが、実は確定度が高いと言えます。

 

アップデートタスク

理論のリファイン

  • 確定記述化の方法論の作成 = 不確実な情報をいかに確定記述化するかを、分析哲学や論理学を援用しながら作ります。たとえばバードランド・ラッセルの「記述理論」においては、固有名詞を確定記述として解釈しています。総合命題と分析命題の区別、意味の対応説などを使います。

確実性から見た記事の規範作成

  • 基本 = Associated Press Stylebookのような具体的な記述法の規範を作ります。そこでは記述ごとの確実性とその問題を列挙し、確定記述化の方法を作ります。

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